「ゆれる」が今年のベスト1です。
一度目を観た時より二度目のほうが深く感動する映画なんてめったにない・・・いやそんな映画ははじめての経験だ。
このゆれるという映画、観れば観るほど脚本の高度さ、俳優の演技の凄さがわかってくる。
一度目を観た時は拘置所での面会シーンのド迫力にびっくりしたけど、二度目はちがった。絵的には動きのない裁判シーンでの兄(香川照之)と弟(オダギリジョー)の表情には一切ださない心のすさまじいまでの葛藤に息をのんだ。
言葉で兄弟の本音をむき出しにする面会シーンはある意味とてもわかりやすいシーンだ。だが裁判シーンでは兄弟の心境をセリフにすることはない。兄弟の心は事務的な裁判の進行によって隠されている・・・・・にもかからわず裁判シーンでは本音をぶつけあう面会シーンよりも雄弁に二人の心の葛藤が浮き彫りになるのだ。
こんなシーンがある。亡くなった女性を解剖した結果、事件前夜に性交渉があったと裁判で明かされる。検事が香川照之にそのことを知って嫉妬から女性を殺したのでは?と追求する。
香川照之はそんなこととは知らなかったと傍聴席に向かって(オダギリジョーに向かって)すいませんでしたと深々とお辞儀する・・・・・。
もちろん香川は前からオダギリが女と寝たことは卑劣な嘘をついてわかっていた。俺はこのシーンを観たときホントに心の底からゾーッとしたね。
それを受けたオダギリも無表情のままだが、あきらかにここから兄に対する感情がねじまがり、最後のあの告白につながるのである。
面会シーンでの兄弟の激突は演技とセリフ(外見と内面)とが一致するある意味わかりやすいシーンである。だが裁判シーンでのやりとりは兄弟は向き合っておらず、心境をあらわすセリフもなく、ふたりとも無表情である。外面と内面がはなはだしく乖離(かいり)することによってもたらされる葛藤が空恐ろしい。
でも映画って面白いね。一度観て面白かったから二度目を観にいったらそれほど面白くないと感じたり、一度目はそれほどでもないと感じた映画が再度観たらめちゃくちゃ面白かったり・・・・なんなんだろう?こういうことをリテラシーがあがったっていうのかな。
あとベスト10を選ぶ時に難しいのが、大好きな映画と映画芸術的に価値がある映画とは違うこと。
たとえば今年一番何度も観にいって大好きなのは「デスノートthe last name」だけど映画史的な観点からいえば「ゆれる」のほうが上なわけで・・・
硫黄島の手紙は今年最も重要な映画のひとつではあるが、正直間宮兄弟のほうが好きなわけで・・・
どうすりゃいいんだろ?
ゆれるの批評はこちら
デスノートthe last nameの批評はこちら
硫黄島の手紙の批評はこちら
IEでこのブログを見る人用に文字を大きくしたけどどうですかね?俺はFirefoxでフォントサイズ24・最小フォントサイズ18で見ているので。