2013年12月09日

アイドルグループを支える「ノイズ」またはJuice=Juice論

Juice=Juiceレコード大賞新人賞受賞記念
アイドルグループを支える「ノイズ」またはJuice=Juice論

よくアイドルファンが夢想することで「俺の考える最強のアイドルグループ」というのがある。歌がうまく、ルックスがよく、ダンスのうまい子ばかりを揃えれば史上最強のアイドルグループが出来上がるという妄想。だがそれは進化論的、組織論的に考えてみても単なる幻想にすぎない。歌がうまくて、ルックスがよくて、ダンスのうまい子をそろえても、魅力的な、ブレイク間違いなしのアイドルグループにはなりえないのである。

それはなぜか。そのヒントはハロープロジェクト所属の新人アイドルJuice=Juiceにある。それもJuice=Juiceメンバーの一人である植村あかりに。
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一番右が植村あかり

Juice=Juiceプロデューサーつんく♂の植村あかり評はこうである。

植村あかりは、ハロプロエッグとして加入して来た時はルックスとは裏腹に
どんくさく、リズムも取れず、大阪人なのに声を張ったりしない、
「この子は本当に芸能界でやって行きたいんだろうか」
って思わせるような子−つんく♂オフィシャルブログ


率直に言おう。植村あかりはアイドル界の中でも特に実力主義といわれるハロプロにおいて実力不足の存在である。ではなぜ歌も下手、ダンスも下手な植村が抜擢されたのか。

まずは進化論的な見地から解説してみる。蟻をよく観察してみよう。えさを求めて一列になって行進する蟻を誰もが見たことがあるだろう。これは蟻が歩く道筋にフェロモンをつけて他の蟻がその後を追っていく姿だ。規律正しく秩序にそって機械的に行動する蟻。だがさらによく観察していくと機械的に行進する蟻の群れから離れたところにいる蟻を見つけることができるだろう。蟻の列には加わらず、フラフラと行列から離れて一匹で行動する蟻。フラフラ蟻ともサボリ蟻とも名づけたくなるような蟻の存在。

この蟻という種にとって一見なんの意味もなく無駄な蟻の存在を「ノイズ」と呼ぶ。

しかし「ノイズ」蟻が蟻という種にとって何の意味もない無駄な存在であれば「淘汰」されるはずだ。つまり蟻という種にとって必要のない存在としていずれ消滅するはずである。しかし「ノイズ」蟻は淘汰されずに今もこれからも存在し続けるだろう。それはなぜか。

なぜならノイズ蟻は蟻という種にとって無駄どころか重要な役割を担っているからだ。その役割とは、規律正しく機械的に行動する蟻だけでは、エサにたどりつく非効率的なルートしか見つけられない可能性がある。ノイズ蟻は集団から離れブラブラ歩いているうちに、エサへの最短距離を見つけ出すかもしれない存在なのである。

100点満点のパーフェクトな蟻の集団は、一見すると完璧で最強なグループのような気がするけど、結果としては非効率な状況に陥ってしまう。デキの悪い仲間がいることで、偶然にも最短距離が見つかる。これはヒトも同じで100点満点取っちゃう奴は確かにすごいけど、そういう奴らばかり集まった精鋭部隊って案外ダメだったりする。ときどきミスしてしまうとか、ときどき変なことをやってしまうような奴がいないと全体としてはうまく機能しない。ー池谷祐二「単純な脳、複雑な私」


この「ノイズ」こそJuice=Juiceにおける植村あかりに他ならない。

ではここで植村あかり伝説をいくつか紹介する。
その一
植村>炭酸水を顔につけると顔が引き締まったり、ニキビが治りやすいと聞いたので、早速やってみようと思って、メンバーに「この炭酸で今日やんねん!」って言って見せたら、「それサイダーだよ」「砂糖入ってるから顔ベタベタになるよ」って言われました(笑)

その二
宮崎「度が過ぎた甘えん坊なんですね。すぐくっついてきて頭を肩にのっけてくる。でも身長もあるし頭乗っけられると重いんですよ(笑)
移動中も全力でもたれてくるんです。手加減知らずというか。佳林ちゃんとかはコトン、ってくらいなんだけどあかりちゃんは全力。ほんっと甘えん坊」
金澤「もう大きい赤ちゃん。こないだも私のヒザで寝てたんですけど冷たいなぁ、って思ったらよだれが……(笑)」ー「B.L.T.」 2013年11月号

その三
℃-uteの座間公演に迷子になったため遅刻して号泣する。
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このように組織における「ノイズ」は「ノイズ」であるがゆえに常にグループ内外の注目を集め、やきもきさせるうちにグループ内の関係性を促進し、グループの差異性、多様性を浮かび上がらせる。その多様性がファンの興味を引きつけ、アイドルグループを自然に「最適解」へ導いてくれるのである。それも計算せずにまるで「見えざる手」に導かれるように。

その見事に個性の分かれたJuice=Juiceのメンバーを紹介しよう。

植村あかり(あーりー、14歳)はグループ内「ノイズ」として他のメンバーに迷惑をかけながら愛される大きな赤ちゃんキャラ(外見は丸の内OL風だが)ハロプロ史上最強の天然といわれる。
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金澤朋子(カナトモ、18歳)はサブリーダーで最もクレバーなJuice=Juiceの頭脳。1年前はフェアリーズや℃-uteの現場にいた、ただのドルヲタ女子高生だったのがあれよあれよという間に本当のアイドルになってしまったシンデレラガール。特殊なボイスを持つ美しき百合の花
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宮本佳林(かりんちゃん、15歳)はセンターにしてプロフェッショナルアイドル。ハロプロ研修生歴5年という長い下積みを経た苦労人。松田聖子の再来(ぶりっこ的な意味だけでなくそのアイドル性も含めて)
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高木紗友希(さゆべえ、16歳)はパフォーマンスでグループを支える屋台骨。歌のうまさダントツ。
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宮崎由加(ゆかにゃん、19歳)はリーダーにして上品でおっとりしたお嬢様。ハロプロ握手女王御三家に入る。
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メンバーの多様な個性は、ファン、消費者の多様な要求に答えることができる。またそうした外在的観点(ファン・消費者力学)からだけではなく、内在的な観点(グループ内力学)からも「ノイズ」は効果を発揮する。それが「教育効果」である。

「教育効果」とは組織における弱点ともいえる「ノイズ」にメンバーが積極的に関わることから始まる。一人だけ実力の劣ったメンバーをそのままにしておいた場合、グループの足手まといになるだけだ。他のメンバーはノイズを放っておくことができない。各メンバーはノイズメンバーに対し「教える」ことが多くなるだろう。それまでハロプロ研修生として大人たちに頭ごなしに怒られるだけの存在だったアイドルの卵たちが、はじめて自分から他者に「教える」という経験をすることになる。これは人格形成において絶大な効果を発揮する。

「教えることは、教えられること」「教えることは学ぶこと」という言葉は古代ローマにも古代中国にもあった。学ぶことだけでなく、他者に教えることが人格形成の上で最も重要なことを古代の人たちも十分理解していたのだ。他者を「教える」ことは人間の成長を促すだけではない。メンバー間の個性と才能のばらつきは「教える−教えられる」関係性を通すことで、「絆」を深める。これをちょっと難しい言葉で言うと「代替不可能性」という。

それまで赤の他人同士だったメンバー、つまり「代替可能」でしかなかった存在が、「教える−教えられる」関係をとおして、かけがえのない存在「代替不可能」な「仲間」へと発展するのだ。

この代替不可能性はグループ内力学において「絆」「仲間」関係を成立させ、ファン・消費者力学においては「キャッキャウフフ感」を生じさせることとなる。「キャッキャウフフ感」とはグループのメンバー同士がじゃれついたり、いちゃついたりする様子のこと。「キャッキャウフフ感」はそれを見るアイドルファンにとって無上の喜びとなるのだ。

もしこれが「俺の考える最強のアイドルグループ」同士だとしたらどうなるだろうか。歌もうまく、ルックスもよく、ダンスもうまい、欠点のない粒ぞろいのアイドルグループには個性と才能のばらつきがないため多様性が生まれないどころか「教育効果」さえ生まれず、メンバーはいつまでたってもエゴをぶつけ合うだけのよそよそしい赤の他人同士のままだろう。

このようにグループ内力学においても、ファン・消費者力学においても個性と才能のばらつきという「多様性」は最も重要なカギとなる。進化論的にも、組織論的にも多様性を持たない「種」「組織」はちょっとした環境変化にも耐えられず滅びるのである。

ノイズが加わることで、変化する環境にうまく適応したり、より適切な答えを見つけたりできる。これがノイズの役割のひとつ。−池谷祐二「単純な脳、複雑な私」


グループ内力学では「ノイズ」の存在が「教育効果」と「代替不可能性」を生み、ファン・消費者力学からは「ノイズ」が「キャッキャウフフ感」や「多様性」を生み、ファンの多様な消費欲求をすくい取ることができる。内在的、外在的にも「ノイズ」が駆動力となってアイドルグループの「最適解」を導き出すのである。

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posted by シンジ at 21:09| Comment(0) | TrackBack(0) | アイドル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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