「俺、頑張ってるだろ」
自分でもちょくちょく、そう言ってるぐらい。
いまから7、8年前ぐらい前の一時期、あまり体調が芳しくなかった頃は、
「いいよ、こんな仕事やりたくねーよ」
って言ったり、
「やめようかな・・・」
そう言い出したこともあった。それまでにも「引退」に関してはよく口にしてたけど、この時期のたけしさんは心底疲れ果てて、
「もう全部、面倒くさいから辞めたい!」
そういう感じがした。
それがここ2、3年、自分でも感心するぐらい働くようになったのは、体の調子が良くなったことも大きいだろう。それに、主治医の先生のお陰もある。
いまから10年、いや、ひょっとして15年ぐらい前だったか、当時たけしさんの追っかけをやっていた女子高生だか女子大生と話す機会があった。どんな場面で、どんな話をしたのか、その詳細は忘れたけど、そのときたけしさんがこういったのを覚えている。
「女の子だからって結婚すりゃいいやって思って適当にやってるんじゃなくて、俺のギャグで笑ってくれるような子はきちんとやっててくれるような子がいいんだよな。だから将来的には、科学者とか病院の先生とかになれるような、そんな人になって欲しいな」
あれからずいぶん長い月日が流れたある日、日テレで番組の収録が終わって出てきたたけしさんに声をかけてきた子がいた。
「たけしさん、覚えてますか?」
そう言われてもわからない。
「昔、追っかけやってた・・・」
・・・・・・あ、覚えてる覚えてる。あのときの追っかけの子だ。
「あのとき、たけしさんに言われたから私、頑張りました!」
彼女はたけしさんの言葉を聞いて、頑張って勉強して医者になっていた。
当時、彼女にとって、たけしさんの声は“天の声”だった。たけしさんの言葉が、追っかけだった彼女の人生を変えた。世間からすれば“ただのお笑い芸人”だったかもしれない。でも、そんなお笑い芸人の言葉がその人の人生に影響を及ぼすこともあるのだ。
彼女はいまたけしさんの主治医になっている。彼女のお陰で、たけしさんの体調もすっかり良くなった。
「俺、なんで辞めようって言ったのかな?」
って言うぐらい。
ー「我が愛と青春のたけし軍団」たけし軍団編 ガダルカナル・タカ監修より