2010年03月15日

漫画家冨樫義博の作劇術その2

ヘタッピマンガ研究所Rの冨樫義博インタビューその2

インタビューその1「天才冨樫義博の作劇メソッド」はここ

ネームの真理に最も近い男と呼ばれる「HUNTERxHUNTER」の冨樫義博先生に直撃インタビュー

編集者サイトウ「先生!ストレートにお聞きしたいんですけど!」

冨樫義博「ハイ何でしょう」

編集「新人の頃これはやっといた方がいい!って事何かありますか!?」

冨樫「そーですね、僕は最初担当さんに面白くない映画を沢山観ろって言われましたね。短編小説読むのと同じで自分ならこうする、こうすれば面白くなるっていうのを観ながら考えてメモっていくんですよ。それはもう今後一切物語に没入して楽しむことはできないぞっていう覚悟の元にね。今では面白い映画もそういう観方しかできなくなったのは寂しいですけど」

編集「先生的にありもののストーリーを自分なりにアレンジするって訓練はオススメなんですね!」

冨樫「あーいやオススメというか、まぁ色んなモノを分析したり分類するのは大好きですけどね、たまにその分類に当てはまんないヤツをどーすればいいんだ!とかね。でもね、今言った訓練もあくまで僕はこうして来たってだけの話であって結局他の人には当てはまらなかったりするんですよ。自分なりの漫画作りのマニュアルを作った時にもそれは感じました。説明してもピンとこないって感想のアシさんもいましたからね」

漫画家村田「でもどの先生にも共通する漫画の秘訣として『キャラクターが重要』っていうのがありますよね。キャラクター作りについてなら誰にでも共通する理論とかあったりするんじゃないですか?」

冨樫「いやーそれこそまちまちだと思いますよ。教えられるのはキャラの人柄を読者にうまく伝えられる手練手管まででね、キャラの人柄自体は大抵作者の人柄を反映したものになりますから、それは教わってどうにか出来るものではないですし」

村田「あ、あのじゃあ先生の手練手管は例えばどんなものが・・・」

冨樫「あ、基本的には漫才ですよ。大好きなんです漫才」

編集「えっ、ハンターってめちゃシリアスじゃないすか!?」

冨樫「基本的にはこう・・・ネームにする前に紙にキャラ達のセリフのかけ合いを書き出すんですよ、ザーっとね。その中でキャラ同士がそいつらしさを守った上での最良の一手をボケツッコミみたいな感じでバンバンかぶせていくんです。そんで論理展開させてってー最後は主人公がそのずっと上をゆく解(オチ)を打ち出す!そんな感じです。これならそれぞれのキャラも引き立つし主人公も立てられるでしょ。ハンターの序盤は特に意識してそういう作り方をしてましたね」

編集「おおおお、レオリオとクラピカが登場する回とか『ドキドキ二択クイズ』の回ですね、たっ確かにそんな構成になってますよ・・・!うおーっハンターの面白さの秘密をちょっとだけ知ってしまった!!」

村田「・・・でも相当な切れ者を描ける人じゃないとこの手法って使えませんよね・・・アホ同士の心理戦なんて見たって・・・ねぇ」

冨樫「いや、あの、論理展開だの堅っ苦しい言い方しましたけど、基本はキャラ達と相談する感じでやってますよ」

編集「相談・・・?」

冨樫「ええ、例えばキャラが二人いて片方が『俺はこっちに行って戦う』もう一方は『俺はこっち』と別行動する展開にしたいとしますね。作中では省略されていてもそういう展開になるまでの経緯をセリフのかけ合いとして紙に書き出してみるんです。ホントにそんな結論になるのか?という検証作業みたいなもんですね。その過程で『あ、こいつの性格だとこっちに行きたいとは言わないな』となったらその展開はボツにします」

編集「こだわりですね〜」

冨樫「ていうか僕自身そういう事やっとかないと不安なんですよ。そいつがちゃんと生きてて自分で判断してる様に思えないと・・・」

編集「いや〜も〜生きてるも何も・・・むしろ尊敬しちゃうくらいの奴がいっぱいいますよねハンターって」

冨樫「で、そういう判断ってギリギリの死線をくぐらせた方が際立つじゃないですか、そういうとこにチャレンジしたいなっていうのは常々思ってたんですよ。というのもね、ヒーロー戦隊ものってあるでしょ?あれ子供の頃始めて観た時にポーズ決めてる主人公に一切手を出さない敵に納得がいかなかったんですよ。逃げもしないし、敵が自分の能力や弱点を大事なとこでペラペラ喋っちゃったりとかね。子供ながら理不尽すぎるだろって思ってたんです。だからなるべくそうしたくはないんですよ、全員が死力を尽くしてる感じを大事にしたいというか・・・」

編集(う〜ん確かにハンターのキャラは全員智将の風格だもんなー敵も味方も。キャラの人柄は作者の人柄か・・・)

村田・サイトウ「どうもありがとうございました」

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前回のインタビューよりストーリー作りの核心に迫る話があったと思う。漫才の手法を使ったキャラ作りがそのままプロット作りに直結するところなど非常に興味深い。キャラクターの性格を突き詰めて考えていくうちにプロットが出来ていくという。

映画でも登場人物がここは当然こうすべきだろうと観客が思っているところを、まるでトンチンカンな行動をされると一気に冷める時がある。映画の中の登場人物が映画を観ている自分よりバカだとイライラするのだ。

漫画にも当然そういうところがあって「アホ同士の心理戦」なんて誰も観たくないのだ。どの漫画とは言わないが。
posted by シンジ at 18:18| Comment(0) | TrackBack(0) | アニメ・コミック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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