私を覆う漆黒の夜
鉄格子にひそむ奈落の闇
私はあらゆる神に感謝する
我が魂が征服されぬことを
無惨な状況においてさえ
私はひるみも叫びもしなかった
運命に打ちのめされ
血を流しても
決して屈服はしない
激しい怒りと涙の彼方に
恐ろしい死が浮かび上がる
だが長きにわたる
脅しを受けてなお
私は何ひとつ
恐れはしない
門がいかに狭かろうと
いかなる罰に苦しめられようと
私が我が運命の支配者
私が魂の指揮官
映画「インビクタス」について何か書こうと思ったけど、映画に関してこの詩にまさる表現はない。とくにこの詩をモーガン・フリーマン演じるマンデラ(の幻影)が朗読する監獄シーンの素晴らしさは筆舌に尽くしがたい。
ワールドカップ決勝前にチーム全員が、かってマンデラが27年間幽閉されていた監獄を訪れる。キャプテンのマット・デイモンがひとりマンデラが捕らわれていた牢に入り、そこで囚人マンデラの姿を見る。27年間屈服することのなかった男の魂をそこに見るのだ。そこにかぶさるようにこの詩が朗読される。正直に告白すると、ここで号泣した・・・。このシーンでこの作品は「映画」になった。
あとは気になったところをTwitter風につぶやくと、
マンデラの言葉のひとつひとつに凄い力が宿っているように感じる。もちろんそう感じさせる脚本と演出がすごいんだけど。なにひとつ無駄なセリフがない。すべてのセリフが格言になっている。
イーストウッド演出はチェンジリングよりさらにうまくなってる。それもうまくなったと微塵も感じさせずに。
マンデラの周囲にいる女の人たちがみんな魅力的。マンデラの側近、秘書、食事を運んでくる女性にいたるまで妙に色っぽくてドキドキする。それこそマンデラとなにかあるんじゃないかと勘ぐりたくなるほど。イーストウッドってこんなに女性を色っぽく描く人だっけ?
必見の傑作なのは間違いないんだけど、自称興行ウォッチャーとしてはなぜこの作品がアメリカでヒットしなかったのかということが気になって仕方ない。全米興収$36,656,474(約33億円程度)大コケといっていい。
アメリカでは白人と黒人の融和というメッセージ自体が力を失っているのか。あるいはマンデラの理想とはほど遠い南アフリカの現実があるからなのか。それとももっと単純なこと、スキャンダルを起こしたM・フリーマンが観客に嫌われたのか、ラグビーという競技に興味が持てなかったのか。アメリカ人自身による分析が読みたいところだが。