鈴木敏夫・もののけの時ね、もののけ姫どうだった?と庵野に聞いたら、レイアウトがダメになったって。
庵野秀明・ダメでしたね〜。よく宮さんこのレイアウト通したなというくらいダメだった。
鈴木・かなり自分(宮崎駿)で書いてるんだけど。
庵野・いや〜ダメですね。レイアウトはかなりね。レイアウトが世界一の人だったのに。
鈴木・レイアウトマンだったものね。
庵野・あの空間のとりかたのなさというのはちょっと・・・あれは年を取ったのかな?
鈴木・空間がなくなっちゃったんだよね。
庵野・すごい平面的になって
鈴木・そうフラットになっちゃった。だからすごいのはお話の方で、絵の方はどっちかというとサラッとしてる。
庵野・あれが、またポニョで粘りがでてよかったです。
鈴木・いや、あのポニョの前にね、宮さんディズニーチャンネル見まくったんだよね。そしたら動きすぎだって言ってたのが途中から動きすぎだと思ったけどそうじゃない。動くことに意味がある。世界は動いているんだからやっぱり動かすべきだ、それをテーマにやりはじめた。ポニョはどうでした?
庵野・Cパートの途中まですごい好きです。
鈴木・Cの途中って、お婆ちゃん話になる直前?
庵野・今の尺でも長いと思いますね。お母さんが宗助を置いて車で行っちゃうじゃないですか、で二人きりになるあたりから、まあ、あんまり乗れない感じ。それまではすごいよかったですよ。特にあのお母さんがいい。
鈴木・色気がありすぎるんじゃないか。
庵野・いや、それがいいんですよ。いままで宮さんになかったものじゃないですか。
鈴木・宮さんがね、あれは近藤勝也(作画監督)がやっていて俺じゃないからって。
庵野・そうそう、それがいいんですよ。いままでの宮さんにはできなかったこと。
鈴木・すっごい色気があるんだよね。
庵野・いいですよ、線だけでそれを出しちゃう。宮さんが手を入れてないところが良かった。あれにまた手を入れ直したらぶちこわしだったのを、そこをグッと抑えているのが大人になったというか、年を取った。
鈴木・さすがだな〜、よく見てる。(笑)
かなり辛口の宮崎駿評が面白い。そして話は風の谷のナウシカで最初に宮崎駿に会った話から、アニメファンには有名な庵野さんが巨神兵を書くエピソード・・動画枚数をなか7か、なか5にするかで宮崎駿と争った話。影は2色にしろ、3色にしたら殺すと言われた話など。
庵野・宮さんは自分が好きか、こいつはいけるっていう人じゃないと教えないじゃないですか。
鈴木・そう、えこひいき。
庵野・えこひいきとあと基本的には自分の下駄がほしいのね。自分の役に立ちそうな奴しか労力を使わない。僕がナウシカの時に色々教えてもらったのはそれだな。巨神兵をこいつにやらせとけば自分はそれを直す手間の分、他のことをやれる。
庵野・(ナウシカの時)最初に面接でお会いした時にはものすごい緊張したんですけど、だんだんそれがとけてきて、ただのおやじになっていって、普段アニメを作ると宮さんってフィルターかけちゃうじゃないですか。
鈴木・バランスをとるんだよね。
庵野・ええ、いい人っぽく。本当はそうじゃない。
鈴木・そうそう、悪い奴なのね。
庵野・ナウシカの打ち上げの時にいったら若い女の子のスタッフが人間が滅びるようなものを作っていいんですか?と宮さんに食ってかかるのを「人間なんて滅びたっていいんですよ!!とにかくこの惑星に生き物が残っていれば、人間という種がいなくなってもいいんだ!」と怒鳴っているのを横で聞いていてこの人すごいと。クリエイターとして宮さんを好きになった瞬間ですね。
鈴木・もしかしたら私たちそのものが汚れかもしれない。そのセリフを読んだときにね、あ〜この人、人間よりあっちの方が好きなんだ、と。
庵野・ナウシカの7巻は宮さんの最高傑作だと思います。宮さんの持っているテーマ性というのが集約されている、原液のまま出している。ホントはすごく“あれ”な人なんですけど、それがストレートに7巻には出ていて良かったです。
鈴木・ナウシカの2やらせろって言ってたのはいつ?
庵野・あれはラピュタの頃だったと思います。
鈴木・あれだけど宮さんに真剣に庵野がやるんならいいんじゃないですか?宮さんをこう説得したんですよ。三部作にしたらどうか?第二部は殺戮の映画になるんだから庵野がやったら絶対面白くなる。で、そのしめくくりを第三部で宮さんがやればいいんじゃないか。いい説得でしょう。そうしたら怒っちゃってやめてくれといって。
庵野・僕がやりたいのはナウシカ7巻ですから。
庵野秀明のナウシカ三部作見たい!宮崎駿もそろそろ年なんだし、庵野に「ナウシカ撮っていいよ」とか言わないかな〜。
ここからは少し話題が変わって高畑勲のこわ〜い話になるw
鈴木・昔、高畑勲と押井守が雑誌で対談したときに押井さんが赤毛のアンの第一話、これがアニメーションをやるときに非常に大きな影響を与えられた。簡単に言うと30分の話を30分でやる。こんなことをテレビのシリーズでやっていいの!?と勇気づけられた。そこで描かれていたのが日常を描くということで・・・と言った瞬間、高畑さんが「あなたの使っているその日常というのはどういう意味なんですか!?」そうしたら押井さんが黙りこくったんですよ。
庵野・押井さんを黙らせるというのはすごいですよね。
鈴木・宮さんにとっての“仮想敵”はわかりやすいよね、高畑さんだよねやっぱり。
庵野・ずーっとそうですよね。
鈴木・いまだに毎日しゃべっていて半分は高畑さんの話。高畑さんがいるから作っている。高畑さんが作ろうとするから作る。おまけに高畑さんに作ってもらいたい。この期に及んで、こういう絵コンテを描いたらパクさんにしかられる。なんという純粋な人なんだろうと。
庵野・何度も挑戦してますよね、高畑さんを超えようと。そのたびに思い知っているような気がします。
鈴木・宮さんは高畑さんという大きな存在に包まれていると自分で思っている。押井さんは宮さんがいなかったら宮さんみたいな映画を作りたかった。同時代に宮さんがいるから自分はこんな変な映画を作るんだと。スカイクロラどうだった?
庵野・僕は、まあ、面白いかな、と。
鈴木・どういう意味“かな”って?
庵野・とりあえず寝ないで最期まで見れた(笑)
いや〜高畑さんの話怖かった。自分が高畑さんに「君の言う日常ってなにかね?」と詰問されたら泣くなw
鈴木・宮さんを仮想敵にしたのは作品でいうと何やってたときなの?
庵野・仮想敵にしたときはもののけですね。ちょうど師弟対決とか世間で言われてた時。
鈴木・勝ちたいと。
庵野・いや、興収では勝てる気はなかったですけど、中身では勝ちたい、と。
鈴木・どうだったの?
庵野・・・・まあ言わんとこうと(笑)怒られそう。
いままで散々師匠宮崎駿を肴に言いたい放題だった庵野だが、それが愛ゆえにだったことがわかる最期の締めくくりにグッとくる。
庵野・エヴァンゲリヲンのTVが終わって、僕がボロボロで、1回ガーッと落ちて、そこからはねあげてくれたのも宮さんのおかげです。あの頃引きこもっていて、このまま生きていてもしょうがないなと考えてた時に電話一本くれて、とにかく休めと。半年ぐらい休んでも大丈夫だからと。そういえば宮さんも3年ぐらい休んでたな〜と。あれでちょっと立ち直りました。やっぱりアニメが好きなんです。アニメを作りたいな〜というふうに戻ったんじゃないかと思います。
鈴木・宮さんのところにぜひ来てください。宮さん元気になるから。だって庵野のこと好きだもん宮さん。今も本当によく話す。今どうしてるって話を。
庵野・また遊びに行きます。
庵野さんが師匠である宮崎さんに対してかなり辛辣なんだけど、やっぱり愛してるんだな〜というのが伝わってくる素晴らしい対談でした。
細田、黒沢清、庵野、宮崎、たけし・・・
僕にもジャストの人たちの評論がこんなにたくさん。
私はCMの企画演出をしていまして、今日もほんとは演出コンテをかかねばならない、さし迫った状況なのですが時間を忘れ読みふけってしましました。
そうした立場の者からみても、このブログは評論が的確で
自戒するための勉強にもなります。
今後もぜひ拝読させていただきます。
宮崎駿さんは、生きている人の中でいちばん好きな人で、生で直な部分がまた分かって、良かったです^^
こちらのブログにたどり着きました