番外「GOEMON」監督紀里谷和明
これは書くべきか迷ったのだが、あまりにボロ糞にいう人が多いのであえて擁護したいと思ってベスト10番外にした。みんなエド・ウッド好きだよね?「プラン9・フロム・アウタースペース」大好きだよね?じゃあ、なんでエド・ウッドを愛するようにキリキリ(=紀里谷)も愛せないのか!確かにGOEMONは脚本ひどいし、CGは安っぽいし、アクション演出もひどい。でも自分はなぜかこの作品を悪しざまにけなせないのだ。なぜならそこにエド・ウッドと同じ情熱を見てしまったから。人は才能が無くたって映画に対する情熱さえあれば映画が撮れるんだ!という純粋な熱気をモロに浴びてしまったから。とにかくキリキリに言いたいのは映画を作り続けろ!ということ。このまま映画を作り続ければ絶対にエド・ウッドのように再評価されるときが来る・・・・多分。
10位「ヤッターマン」監督三池崇史

とにかくお金をかけて信じられないほどくだらないことをやる三池に脱帽というか脱力。ヤッターワンと敵メカのエロに「これはやっちゃだめだろ・・子供も見てるんだぞ・・」と映画館の親子を見てソワソワしてしまった。特筆すべきはセットと衣装の素晴らしさ。映画の予告でドロンジョの衣装を見てこれは勝てると思った。もう少し短く編集すればなお良し。
9位「悪夢探偵2」監督塚本晋也

これすごく面白かったのに誰一人として評価してないというか、話題にすらならなかった。ホラー映画としても一級品だし、母と息子の感動ものでもある。サム・ライミの「スペル」が好きな人は絶対好きになる怖くて笑えて感動できる最高のエンターテイメントだと思う。それといつもヌボーッと演技してる松田龍平が役者として格段に成長した姿を見せている。
8位「クローズ ZERO II」監督三池崇史

ひたすら殴り合い蹴り合うだけの映画。ストーリーなんてどうでもいいと思わせるだけの勢いがある。キャラクターの立ち具合も素晴らしい。特に山田孝之演じる百獣の王芹沢は飛び抜けて魅力的。
7位「パンドラの匣」監督冨永昌敬

これ批評書きにくい映画なんだよね。でも俳優にすごく魅力があって、いつまでも思い返してしまうということは演出に力があるということでもある。とにかく仲里依紗、川上未映子が最高。これだけ女優を魅力的に撮る(しかも一人は素人の作家)力量は無視できない。染谷将太もスターになるかもね。
6位「ヴィヨンの妻〜桜桃とタンポポ」監督根岸吉太郎

時代錯誤なまでの堂々たる文芸大作。とにかく撮影とセットは完璧。こういう日本映画の伝統は失われたと思っていたのでびっくりした。昔はこういう文芸作品に一定の需要があったものだが(浮雲とか墨東綺譚とか)この作品は興行的には撃沈。でも一見の価値あり。
5位「プライド」監督金子修介

興行的にも批評的にも完全に黙殺されているのが惜しいほどの傑作。最初映画を見始めたときはぶっさいくな演出、どへたくそな演技に失笑していたのが、だんだん身を乗り出すように映画にのめり込んでしまうという、これぞ映画のマジックというものを堪能させてくれる。欠点をあげつらおうと思えばいくらでも欠点をあげられる作品なのに、いつのまにか感動しているという。この作品でも“俺たちのミューズ”満島ひかりは最高です。
4位「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」監督庵野秀明

映画としてはかなりいびつな形をしていることは否めない。ダイジェストチックな戦いの細切れ感が強いこともある、が、それでも凄まじいばかりの熱量がこもっていることは否定できない。次回作でどう着地させるのか興味はつきない。
3位「ディア・ドクター」監督西川美和

世の中には「ゆれる」派と「ディア・ドクター」派がいるそうだが自分はどっちも大好き。むしろいろんな解釈が可能という意味ではディア・ドクターのほうがより深い作品だと思う。賞レースでは余貴美子と票が割れて不利のようだが、八千草薫の凄さに気づいて欲しい。西川美和はデビュー作「蛇イチゴ」からすべて駄作なしどころか傑作しか撮っていない。次回作どんなものを撮るのかいまからワクワクする。
2位「愛のむきだし」監督園子温

ホントはこれが1位でもいいんだけど、この作品に関してけなすひとはほとんどいないと思うのであえて2位で。2009年度最大の衝撃といってもいい園子温の最高傑作。ありとあらゆるテーマ・・愛、信仰、神、SEX、家族など、とてもじゃないけど描いても描ききれないような深遠なテーマをすべてぶち込んでなおかつそのすべてに答えを出そうとしている信じられないほどの蛮勇。そんな深遠なテーマをあつかっていながらめちゃくちゃ面白いエンターテイメントに仕上げる巨大な才能にノックアウト。満島ひかり、安藤サクラはこの作品で永遠に映画史に輝く。呆然と見上げるほか無い圧倒的な芸術とエンタメの巨大伽藍。
1位「サマーウォーズ」監督細田守

ホントは1位は愛のむきだしなんだけど、どうもサマーウォーズが不当に批判されてるような気がしてならないので、このブログの姿勢をみせるためにこの作品を1位に選んだ。サマーウォーズを批判するロジックが伊丹十三映画を批判するときとまったく同じなのが気にくわない。いわゆる映画の登場人物が公務員、公僕だとそれだけで脊髄反射的に批判する反体制ぶりっこばかりなのが笑止。そういう薄っぺらな反体制ポーズが伊丹十三の再評価を遅らせていることに気づくべき。まあ敵が多ければ多いほど細田守を擁護しがいがあるけどね。あと今週号のキネ旬で大高宏雄がサマーウォーズをファイトシネクラブ賞に選んでいるがその理由が自分と同じでうれしくなるー「強靱な大衆性」by大高宏雄。それこそ細田守の最大の武器だ。宮崎駿作品は大衆性を失ってひさしいし(それでも大ヒットするんだからすごいけど)、エヴァをはじめとするアニメ作品の多くは熱狂的な信者に支えられている。テレビ局の作る大量動員することのみが要求されるTVドラマ作品でもなく、コアなファンのみを相手にする作品でもない。真に質の高い大衆性のある作品を作り出そうとするこころみを誠実にしているのが細田守なんだ。(あ、あと原恵一監督も)