このブログではかなりカムイ外伝を酷評していて、なおかつネタバレもしているので注意してください。
なぜ失敗したのかその1・元々崔洋一監督はアクション向きの監督じゃない。崔のスタイルはフルショットやロングショットでのスタティックな絵作りに特徴がある監督で、どう考えてもアクション向きじゃない。この映画に崔を選択したプロデューサーが悪い。
その2・映画カムイ外伝のつまらなさと映画どろろのつまらなさは驚くほど酷似している。どちらもストーリー展開、脚本に致命的な欠陥を抱えている。
カムイ外伝のアクションの見せ場はオープニング10数分ほどに集中しており、後はさほど見せ場もなく鈍重きわまりない展開がラストまで続く。宮藤官九郎はエンタメ脚本の基本を知らないのか?(知らないわけがない)。映画はクライマックスに向けて物語の展開を早め、アクションの見せ場をたたみかけるのが娯楽映画のストーリー展開であり脚本の基本だとド素人の自分でも知っている。なのになんだこれ?映画の冒頭が最大の見せ場であとはどんどん先細りして見せ場がなくなっていくってどんな娯楽映画の脚本だよ!
なぜ失敗したのかその1もその3もない。ほとんどすべての原因はこのお粗末な脚本にある。
脚本の問題点を考えるに、物語を支え、進めていく映画の推進力があまりにも弱すぎるかぶつ切りになっていることがあげられる。まず一番重要な推進力は「カムイが抜忍でかっての仲間たちから追われている」というのが一番重要な車輪だと思うのだが、この車輪に関してはオープニングで描かれるだけですぐにその役目を終える(それ以降は同じ抜け忍であるスガルのカムイへの猜疑心ーこれは物語を進める車輪の役目を果たしていない)。仲間たちから逃げるという車輪が脱輪した後、物語を推進していくのはカムイを助けた半兵衛が領主の馬を殺して追われているという車輪。
しかしこの半兵衛という車輪も物語を進めていく推進力としては弱すぎて話にならない。こうして物語を力強くすすめていくはずの両輪が早くも脱輪。それ以降は平和な島での生活描写が続く。アクションもオープニングですべて見せきってしまったようで、アクションもない見せ場もない物語を推進していくものもない、というないないづくしで中盤から終盤にかけてはあくびしかでてこない。
クドカンの弁明を想像するに、ラストの地獄絵図を強調したいがゆえに中盤はあえて見せ場をなくして平和な島での生活を描写することに費やしたんだ、というのがクドカンの考えなんでしょう。でもそれはものの見事に失敗している。
本来であればクライマックスはこれ以上ないほどの衝撃、地獄絵図のはずなのに主人公カムイの気が狂うほどの怒りや絶望感がまったく伝わってこないのだ。これは崔の演出も悪い。
原作のカムイ外伝スガルの島での虐殺描写は暗い屋内で家族が折り重なって死んでいるというショッキングな描写で死というもののえぐさ、悲痛さをうつしだしていたが、映画は明るい砂浜で人がポツリポツリと倒れているだけで陰惨さがまるでない。このシーンは絶対に観客が不快さを感じるくらいに陰惨さを強調しなければダメなシーンでしょ。陰惨さと絶望でカムイの内面をどす黒く染めなくてはこのシーンがまったく生きてこないんだよ。崔の薄っぺらい演出にガックリする。
崔洋一は庵野秀明のヱヴァ破の虐殺シーンを観てないのか。これ以上ないくらい観客に不快さを強要する強烈な演出で主人公の絶望をあぶりだす。(そのヱヴァ破の演出についてはこちらに書いてあります)→黒澤明と庵野秀明の対位法の違い「エヴァンゲリヲン新劇場版・破」。崔洋一は庵野の爪の垢でも煎じて飲むように。
原作の話が出たから、映画との比較を。原作のスガルの島と映画はほぼ同じプロット。しかしなぜか映画は原作に豊富にあるアクションシーンを削りに削って原作よりものすっごい地味に作り直しているのだwいや待て待てw原作がアクション少なめだから映画では派手に脚色しようとするのが普通でしょ。この作品はまったくの逆。原作よりアクション少なめ見せ場少なめ。クドカンよ、なんで映画を原作より地味に脚色したんだ?びっくりするわ。
いままでボロ糞にけなしてきたけど、崔もクドカンも決して2流の監督、脚本家ではない。ではなぜこのような大惨事を招いたのか。自分の資質と真逆のものをあつかってしまったからだとしかいいようがない。
こんなひどい出来になるなら原作に忠実に映画化するのではなく、映画的な展開にするため大胆に脚色したほうがよかったのでは?しかし日本で面白いアクション映画(実写)が作られる日は永遠に来ないのではないだろうか。
2009年09月25日
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