いきなり一番気になったところから書くけど、あの音楽の使い方ありなの?
「今日の日はさようなら」(1966)がこの作品中もっとも凄惨なシーンで流れるが、誰もが違和感を感じるこの音楽の使い方と演出法は黒澤明がよく使っていた対位法という音楽の使い方です。
有名なのは「野良犬」(1949)で刑事(三船敏郎)と犯人(木村功)が対峙する緊張感みなぎるクライマックスシーンにおよそ緊迫したシーンにそぐわないピアノを弾く音が聞こえてくるとか、三船と木村が格闘してお互いヘトヘトになって倒れると子供たちが「ちょうちょ」を歌っているシーンとか。
緊迫したシーンにおだやかで明るい曲をながすとそのシーンがより強調されるという対位法。
でも・・黒澤明は尊敬してるけどこの対位法って嫌いなんだよね。なによりあざとい感じがするのが嫌。あまりにもわかりやすくあざとく、大げさな感じがして。もし現代の作家が作品中この対位法を使っていたら、絶対このブログで酷評すると思う。
ただ、庵野がこのエヴァ・破で使った対位法は黒澤のとはちょっと違うんだ。自分自身対位法が嫌いとはいえ黒澤の演出は確かに効果を上げていると認めざるえない。映像と音楽の相乗効果を実感できるからだ。
でも庵野の対位法はあきらかに黒澤の対位法とは似て非なるものだ。エヴァ・破の中で最も残酷で最も悲惨なシーンに流れるのはどう聞いてもへったくそな“と〜もだちで〜いよお〜”だ。
これは対位法本来の目的である〜映像と音楽の相乗効果〜とはほど遠い違和感を見るものに強要してくる。いわゆる異化効果をねらったもので、黒澤明の考える対位法とは違い、見るものに違和感や不快感をあたえる目的がある。
ただでさえ血みどろの残酷さと碇シンジの絶望でどす黒く塗られた画面に「と〜もだちで〜いよお〜」という歌声。誰しもが狂気を感じ、イライラして吐き気をもよおすだろう。いわば不快さ二重底。
その庵野の狙い、演出意図はよくわかる、わかるけども、どうか?というのが俺の疑問。
映像的ドラマ的には相当すごいこと、やばいことをやってるにもかかわらず、この対位法的異化効果により映像のドラマ性が薄まってしまっているような気がするからだ。本来対位法というのは映像の力を増加させる目的があるにもかかわらず、庵野版対位法は逆に映像に没入するなと言っているかのよう。
じゃあ俺だったらどうするかというと、このシーン全編無音か、倒壊した家屋の中から聞こえるラジオの曲とか、さりげない対位法ならあざとさを感じさせることなく衝撃を与えることができたんじゃないかな。
映画のちょっとした感想というより対位法についての文章になってしまった・・・
キャラクターについての話。真希波・マリ・イラストリアスはまだ顔見せ程度で人物描写らしい描写がほとんどないのでなんともいいようがないが、野蛮な少女という印象。くよくよ悩むキャラより野蛮な女の子が好きなので期待。学園ラブコメ的展開はじゃっかん気恥ずかしさを感じたけどほほえましく見ることができた。アスカもレイも凄く可愛いし、シンジは単にグズグズクヨクヨした子ではなく、その苦悩に説得力がある。だからクライマックスは泣けるし感情移入してしまう。
エンディング曲は宇多田ヒカルなんだけど、あんまりあってないような・・・俺が「Perfume「edge」の壮大さにノックアウト」に書いたようにPerfumeアルバム凾ノ収録されたedge(-mix)がエンディング曲だったらな〜と妄想してしまう。edge(-mix)はガチで震えるくらい凄いし世界観がエヴァにピッタリなんだ。
なんだかんだいってつづきがものすっごく気になるので「Q」絶対見にいく。
つい買ってしまった・・・

ヤコぺッティあたりを挙げた方が
今回のエヴァ演出には相応しいと思います
いまさらこのエントリー読んで、おっ!と思ったのでコメします。
相乗効果ではなく、違和感を強要
というのはうん、凄く納得です。私もそう感じました。
TV版と旧劇場版は未見とのことですが、あのシーンはTV版ではアスカではなく、別のキャラが虐殺されてたんですよ。
で、TV版では"破"の最後らへんでも流れたあの荒々しい、疾走感満点で非常に暴力的なBGMが流れてました。
TV版からのエヴァファンであれば、初号機がダミープラグの力によってシンジのコントロールから離れ、暴走状態に陥った時、瞬間的に、それはもう条件反射のように、脳内ではTV版のBGMが流れてるワケです。TV版時のBGMはイントロからしてインパクト絶大の曲なので、違和感は瞬時に襲ってきます。
なので
虐殺の対象がアスカ(違和感その@)
暴走時に馴染みのあるBGMが流れてこない(違和感そのA)
しかもそのBGMが「い〜つまでも〜♪」ww(違和感そのB)
10年前とは違い、あたりさわりのないエンタメを目指しているんだと先入観バリバリで観てたので、あの演出には面食らいました。
まあ庵野が悪趣味(一応褒め言葉のつもりですw)なのは周知の事実ですし、いちファンとしては次回作以降でもどんな風に期待の斜め上をいってくれるか楽しみです。