尾田栄一郎・僕が一番好きなのは森繁久彌さんが森の石松を演じた「次郎長三国志」(1952年から始まったシリーズ作マキノ雅弘監督)なんです。次郎長三国志を見たときに「これこそ!」と思いました。自分のやりたいことはこれだ!この人(マキノ雅弘)やってたっていう。なんでこんな人が有名じゃないんだろう。はじめて意識した監督です。
しょっぱなからこれである。ワンピースファンの皆さんすいません。尾田先生のことを書きますが、おそらくひとつも理解できないと思います。この記事は日本映画のファンだけに向けて書きます。
尾田・中村錦之助が大好きなんです。
鈴木敏夫・なんでぇー!(笑)
尾田・かっこいいじゃないですか!「瞼の母」(1962年加藤泰監督)とか感動しまして、あの演技力!あれは演技力がないと全然成立しない映画ですよ。
鈴木・一応昔ね、マンガの編集者やってたんだよ。ホントに古いんだけど、1973年頃かな。
尾田・生まれてません・・・。
鈴木・うそぉー!(笑)
尾田・今34歳ですけど・・・1975年生まれです。
鈴木・今日はワンピースの1巻だけ読んだんですよ(笑)
尾田・七人の侍をイメージして・・・
鈴木・やっぱそうだよね。
尾田・なぜ鈴木さんとこんな話になったかというと、ジブリで今度、次郎長三国志をお願いしますと言いに来たんです(笑)
鈴木・なんで次郎長三国志なのかはすごいよくわかる。ワンピース第1巻読んだだけでわかった。
尾田・古いものにすっごい興味があって、大元をたどったら、昔から落語とか漫才とか古いものを聞いていてちょっと変な子供だった。中1の時の親からの誕生日プレゼントが新春寄席のチケット(笑)。なんでそこに興味を持ったかというと、昔の漫才師の人たちが真似をするんですよ、浪曲の。それこそ広沢虎造とかの。
鈴木・虎造聞いたの?
尾田・大好きです!
鈴木・大好きなんだ!!(笑)
尾田・広沢虎造iPODに入ってますから。虎造ファイルがありますから。
鈴木・だって広沢虎造という人は本当に人気があったのは、ぼくらの親父の世代だから。僕は親父がラジオで聞いてるのを横で聞いていた。僕が驚いたのは山下達郎も虎造が好きだって聞いたとき。
尾田・聞くべきですよ。かっこいいですよ。僕は落語を聞く種族ですから。
鈴木・落語は誰を聞くの?
尾田・誰でも聞きますね。新しい人たちも古典も。落語ファイルがありますし、特に好きなのは柳家権太楼。あの人はすごい名人でしょう。
鈴木・さっきの次郎長三国志、森の石松のセリフあるでしょ、森繁の。あのセリフは男はつらいよの寅さんの決めゼリフになっている。僕の想像だけどね、山田洋次という人は次郎長三国志が好きで、おそらく当時映画館でノートに森繁のセリフを書き取ったはず。
尾田・渥美清さんのでていた、中村錦之助さんの・・・
鈴木・「沓掛時次郎 遊侠一匹」(1966年加藤泰監督)僕はあの映画大好き。
尾田・あの映画で渥美さんが啖呵切るのすっごいうまいなぁと思って。
鈴木・長谷川伸っていう人が原作で、渥美清の登場シーンだけがオリジナル。これを作った人が加藤泰。その叔父さんが山中貞雄。
尾田・それは誰ですか・・?
尾田さん次郎長三国志や中村錦之助作品はかなり見てるにもかかわらず、加藤泰も山中貞雄も知らないという、しかも鈴木敏夫が山中貞雄の「丹下左膳百万両の壺」のことを話し始めると、「あれ僕大好きなんですよ!」という。山中貞雄は知らなくても百万両の壺は大好きという、一体どういう映画の見方をしているのか?おそらくその作品が名作だとか有名な監督作品だとかいっさい知らずに片っ端から映画を見てるみたい。作家主義や名作主義に偏らない正しい映画ファンといえるかも。
その後、座頭市の話になる、尾田さんはほとんど座頭市を見てると言うが、座頭市第一作目の「座頭市物語」のことは知らないらしく、鈴木さんが話し始める座頭市と平手造酒の一騎討ちに大喜び、拍手喝采している。
鈴木・本当のこというとね、ワンピース読んでね、最初の感想「なんだこれ、ヤクザ映画だな」(笑)
尾田・(任侠映画が)好きなんだと思う・・・だったら、今回の映画(ONE PIECE -FILM- STRONG WORLD)見て欲しいなぁ(笑)後半見て欲しい。今回は僕は日本人の討ち入りDNAに問いかけたんです。雪の降る夜に討ち入りをするという。
鈴木・今回製作総指揮?10周年。
尾田・10周年でまかされたので「よし、任侠映画作ろう」と思って(笑)
鈴木・やっぱり尾田さんってすごいな。自分の年齢より昔のものを見てる人って、ものを作る人に共通してますね。
正直ワンピースには興味なかったのですが、尾田先生が中村錦之助好き、任侠映画好きと聞いては黙ってはおけない。ワンピース見にいこうかな。ただ、今はワンピースはポニョを超える記録的な大ヒットだそうで、もう少し客足が鈍ったら行く。
“鈴木敏夫のジブリ汗まみれポッドキャストその2”もひたすら映画談義。尾田さんの、というより、鈴木さんの映画一人語りになっているので興味のある方はぜひ聞いてください。ただし、アニメファンやワンピースファンはおそらく何を話しているのかまったくわからないと思います(笑)


